第2章 知識ゼロからの逆襲

私は受験2回目での合格です。
1回目はなぜダメだったのか、今でははっきり原因がわかりますが、当時は教えを請う師もおらず、暗中模索の中で進んでいました。

 

もし、当時の私のそばに、いまの私がいたら、合格への道はもっと近かったはずです。
まずはここで、私の1回目の受験体験をご紹介します。

 

■合格体験記を読み通信教育を選択

私は、あるきっかけでこの社会保険労務士に関心を持ったのですが、

  • 「どんな科目があるのか」
  • 「難易度はどれくらいなのか」

などはまったくわかりませんでした。

 

そこで、試験内容を調べるために、まず書店に出向いて、合格体験記の載った関連本を何冊か購入しました。目を通すと、合格するのはかなり難しい試験だということがわかりました。

 

正直なところ、受験するかどうか迷いました。
単純に、知識を積み上げれば限りなく合格に近づける試験ではなく、この試験特有の特徴がいくつかあることがわかったからです。

 

まず、足切りという恐ろしい基準があること。
そして一般常識を筆頭とした、対策を講じようにも難しい科目が存在していることもわかりました。
おもしろいことに、合格体験記によっては、いかに合格に至ったのか、その表現が微妙に違っていました。

 

短期間でラクラク合格できたというお気楽トーンのもの。
一方、かなりの実力者と思われる人が、ご存知のとおり足切りの救済措置でなんとか合格したというもの。
じつに様々でした。

 

とりわけ、何人かは確実に、この試験制度の理不尽さについて怒っていました。
合格しても、この試験制度はおかしいという人がいる・・・なんだか、恐ろしい試験だなと感じました。
いずれにせよ、わかったことは、合否にかなり「」という要素も含まれるということです。

 

しかし迷ってばかりでも仕方がないので、挑戦することを決意しました。
年の押し迫った12月下旬のことでした。
最初は独学も考えていましたが、合格体験記をよく読んでみると、合格者の多くは通学・通信で受験勉強をした、とのことでした。

 

わたしの場合、通学は一考の余地もなく地理的に不可能でした。
そこで、合格体験記にもよく登場していた、ある大手受験予備校の通信講座で合格を目指すことにしたのです。

 

受講料等に5万円近くかかりましたが、合格体験記にはよく出てきた受験予備校でしたので、当時は努力次第で十分合格できるだろうと踏んでいました。

■テキストの意味がわからない

私の選択した通信講座は、科目ごとの基本テキストのほかにサブテキストが数冊あり、また月刊誌が定期的に送られてきました。
そして科目ごとに数問の添削課題を提出する、という形式のものでした。

 

テキストは講座受講者だけに送られるオリジナルであり、市販されていないものです。
従って、教材が届くまで事前に見本誌すらチェックすることはできませんでした。

 

しかし、なんといっても大手なので大船に乗ったつもりで信頼していたのです。

 

ところが、受験テキストを読んでまずビックリ。
「これはいったい何なのだ。これが日本語か!」おもわず心のなかで叫びました。

 

しかし、5万円の投資額は私にとっては大きな額です。
あっさりと捨てるわけにはいきませんでした。(これが傷口を広げたような・・・)

 

「安衛法」の「シャー」(これっていったい何なのか、いまだに不明です。)とかの専門用語にショックを受けつつ、とにかくテキストの通読を進めました。
しかし、さっぱり理解できません。焦りを募らせる日々を余儀なくされることになったのです。

■講師の驚きの言葉

そんなおり、テキストとともに届けられる月刊誌に「無料ガイダンス実施の案内」を見つけた私は早速、参加することにしました。
講師は現役社労士の方で、通学生向けの講義を担当されているとのことでした。

 

自分の人生で、社労士という人に出会ったのはこれが初めてでした。
また、自分以外の社労士試験の受験生に会ったのも初めてです。なんとなく胸を躍らせながら説明を聞きました。
しかし、しばらくして、その講師からおどろきの言葉を聞くことになるのです。

 

「ここ(予備校)にも通信講座があるけど、まずこれで合格するのは難しいですね」

 

「○●△×・・・!?」
それをいうかな!?って感じで、この講師の発言にビックリしました。w(゚o゚)w
テキストの内容がよく理解できず、なにか突破口でも見つけられれば・・・という思いで参加したものだったので余計にショックは大きかったです。

 

ガイダンス終了後、その講師に発言の真意を尋ねましたが当然要領を得ない回答でした。
逆に、講師のほうも焦ったでしょうね。なぜここに通信生がいるのかと。

 

おそらく、このガイダンスは通学生募集のために開催されたもので、通信生が参加することは想定していなかったみたいです。

 

いずれにせよ、大手予備校だからと信頼して、その通信講座に申し込んではみたものの、何か受験業界の裏側を見てしまった思いでした。

 

この経験から、なぜ、テキストの内容がよくわからないのか、よくわかりました。
テキストの内容が読んでもよくわからないのは、そのテキストが講義を前提に作られている
とわかったのです。

 

講座の基本は通学生向けでできており、通信生用に独自に開発されたものではなかったのです。(なるほどね!)
しかし当時は、また新たに通信講座を探したりとか、基本テキストを買い求めるという行為はしませんでした。

 

ある程度学習は進んでいたので、また一から出直しするのは避けたかったのです。

■過去問題集の失敗

過去問題集についても大きな失敗を犯しました。
書店で購入した問題集をやりはじめたのはいいのですが、なにしろ誤植が多く、辟易しました。
新刊だったのですが、ほとんど校正なしに本になってしまったのではないかというほど誤植の多い問題集でした。

 

しかし、知識ゼロのわたしにその間違いがすぐにわかるはずもありません。
テキストで問題集の訂正箇所を校正しながら解いていくという、なんともお粗末な展開となってしまいました。

 

これは大きな教訓になりました。ここで声を大にして言います。
新刊本は絶対に買ってはいけない」と。
ちなみに次の年にはその問題集は販売されていませんでした。おそらくクレームが殺到したのでしょう。
もしかしたら、とてもレアな本を手に入れたのかもしれませんね。(¨;)

■半分あきらめ

こんな足踏みをしながらも時間は過ぎていきます。
そして、4月に受けた模擬試験はまったく振るわず平均点以下。前途多難を感じました。

 

合格体験記を読むと、まだまだやるべきとされている教材が山積みでした。
そして白書も買い、労働法全書も買いました。
一方、テキストを読んでいても、科目間の微妙な違いなどが出てきてますます混乱してくる状態でした。

 

そこで、書店でいわゆる横断本を買いました。
被保険者の範囲の違いなど、項目ごとに科目間の比較ができ、試験科目全体のイメージがなんとなくつかめてきたような感じがしてきました。

 

なにか視界が開けてきたような気がしました。

 

しかしそれで、問題ができるようになる、ということではありませんでした。
テキストの読み込みが浅いため、科目の全体像は掴めても問題が解けるレベルまでにはいかない・・・・当時はそう思っていました。
しかし実際には、問題演習の量が決定的に不足していたんですけどね。

 

そして、自信のないまま1回目の本試験を迎えました。
問題を解いていくと次々に見たこともない選択肢が出てきました。解きながらだんだん情けなくなってきたことを思い出します。

 

受験が終わって、いったい何点取れているのか、皆目見当がつきませんでした。
結局1回目の受験は、選択式(当時は記述式)は合格点に達したものの択一式は5割ほどしか取れず、惨敗に終わったのです。

■間違っていた方法論

試験が終わって冷静に1回目の敗因をじっくり分析することにしました。

 

原因ははっきりしています。まず勉強不足で実力がなかった。これは事実でしょう。

 

しかし、それ以上にそこに至るまでのプロセスに大きな問題があったことに気付きました。
たくさんの教材をこなさなければいけないという意識が強すぎて、結局どの教材も中途半端になってしまったのです。

 

いろいろな教材を順番にやっていこうとすると、よほど時間のある人でないかぎり時間がなくなってきます。
そうではなく、メリハリのついた学習をすべきだったと気付きました。

 

しかし1回目の勉強中は、合格に必要な勉強すべき量がどれくらいなのか想定できないために、全てをやれると単純に考えたワケです。
出題範囲の広さ、やるべき教材の多さに驚き、不安を抱く一方で、おろかにもすべての教材をなんとかこなさなければという呪縛に縛られていたわけです。

 

一方でどれも完全にできない自分に焦燥感を募らせてしまう・・・。こういう悪循環だったわけです。

 

そこで2回目はやるべきものを絞り、手掛けた教材は完璧をめざすこととしました。

 

また、1回目は「必ず合格する」という気構えが基本的にできていませんでした。
「できれば合格したい」という中途半端な気持ちだったのです。

 

ですから、模擬試験などで自分の実力を知るにつけ、今年はダメなんじゃないかという一種のあきらめが出てしまいました。

 

2回目は、なんとしても合格すると強く念じました。
知識の習得以外に、どうすれば合格点をとることができるか ― いかに『合格力』を身に付けるのかを考えるようにしたのです。
絶対に合格できると信じて机に向かいました。
こうして、2回目の学習は順調に進んでいった、といいたいところですが、じつはそんなに簡単なものではなかったのです。

■2回目のリベンジ

2回目の受験勉強は、7月の本試験終了後すぐに始めました。
その時期はまだ次年度向けの教材は発売されていなかったので、前年度向けのテキストと過去問題集を書店で購入しました。

 

最初の1ヵ月くらいは、科目ごとにテキストをある程度読みこんで過去問題に挑戦してみるという流れで進んでいきました。

 

しかし、問題がまったく解けないのです!
テキストの内容を十分把握しないまま問題演習に入るため、問題が解けるレベルにいっていないんですね。

 

そこでまたテキストに戻って該当箇所の振り返りを行うことになるのですが、これが非常に時間がかかるのです。さらにテキストの読み込みを進めていっても、なかなか問題は解けるようになりません。

 

また、進むペースが遅いために、その時点では回答できた問題も時間の経過とともに忘れてしまいます。
また悪循環に入りつつあるようでした。

 

そして、ふとわれに返りました。
そうだ、その繰り返しが一回目だったのだ、と・・・。

 

そこで、これまでの発想を変えました。
「問題演習を通してテキストを理解していこう」
と考えたのです。

 

そして、次年度向けの教材が発売されると、さっそくある予備校の演習中心の通信講座を申し込んだのです。10月のことです。

 

そして、ここからすべてが好転しはじめたのだと思います。

 

また、今回申し込んだ講座は教材セットに講義CDも含まれており、講義を聴けるものでした。
これは幸いでした。実はCDによる講義に対して、大きな期待をしていたわけではありませんでした。
(テキストに基づいて説明がなされる講義ではなく、問題演習の解答解説だったからです)

 

ところが、聴いてみて驚きました。
テキストを自分で読むだけでは理解しにくいポイントが、音声だけの講義だというのに、聴くだけで理解できるのです。
例を挙げましょう。
厚生年金の科目のなかで、在職老齢年金の停止方法の計算式があります。
それは数式で書かれているのですが、ガチガチ文系の私にはその計算式がどういうことを意味しているのか、テキストを読むだけではよく理解できませんでした。

 

ところが、講師が図式で説明されると、一発で理解できたのです。
これが講義の威力か」と思わず感心してしまいました。

 

さらにCD講義は通勤途中にも聴くことができるという利点もありました。
私は自動車通勤だったため、ここでも新たな勉強時間が確保できることになったのです。

 

次に、新しいテキストを購入することにしました。市販のものをじっくり比較検討して購入しました。

 

本試験までずっと使っていくものなので、ここでいい加減に決めてしまうと後で苦労します。
1回目で十分懲りたので、かなり慎重に選びました。

 

といっても、すでにどういうテキストにするかという基準は持っていました。
1冊でコンパクトにまとまったもの、科目ごとに分冊になっていてとても詳しく書かれているもの。
どちらが良いか、判断に迷うところでしょが、私は分冊のものを選びました。

 

たしかに、それらの分量はとても多いです。1冊のコンパクトのものでさえ、千ページを超えたりします。
まして分冊のものは・・・・・、生半可なページ数ではありません。

 

しかし、わたしは構わなかったのです。
なぜなら、すでに問題演習を中心軸に置くことを決めていたから。
従って、テキストは参考書であり、テキストの内容を全てマスターしようとは最初から考えなかったのです。

 

振り返ってみると、1回目には見えなくて、2回目に見えてきたことはやはりたくさんありました。
もちろん、2回目の講座の内容は、1回目の通信講座の内容と比べれば雲泥の差です。
しかし、それ以上にメンタル面で大きな違いがあったのです。
それは、この試験にかけるという思い。

 

2回目は
「今回はどうしても合格したい。」
それを強く思いました。
いかにしたら合格できるのか。あらゆる邪念よりそれが勝っていたように思います。